近年、難しいと話題になっている修了考査について語ります。
おそらくこの記事を読まれている方は、公認会計士試験という厳しい壁を乗り越えてこられた方々でしょう。
会計士試験に受かった喜びもつかの間、修了考査は最後に立ちはだかる試験であり、モチベーションがどうしても沸かないという方もおられるかと…
僕自身も会計士試験が終わった後も燃え尽きており、補修所の試験や課題研究を切羽詰まりながらもこなしていくうちに、気が付いたら早3年がたち修了考査がきちゃった感じです。
当時、私は勉強をするにあたりネットの情報を集めようとしましたが、修了考査の勉強方法に関する情報は少なくあまり参考にならないと感じました。
おそらく、ひと昔前は軽んじられていた傾向もあったため、そのニーズがなかったためでしょう。
しかし、近年は問題も難しくなり論文式試験と並ぶような位置づけへと変化してきた傾向もあります。
そのため、私が当時修了考査の勉強を経験したことをベースにこの記事で紹介しようと思います。
この記事の目次は以下の通り。
目次
こういった疑問点の解決になる少しでも、皆さんの合格の助けになれれば幸いです。
ちなみに、自己紹介しますと、僕は2018年に公認会計士試験に合格し、令和3年度(2021年度)の修了考査を受験しました。
監査法人勤務の現役会計士です。
公認会計士試験は短答・論文ともに1発で合格しております。
ただし、大学は日東駒専でいたって平凡であり、決して頭のいい部類の人間ではありませんし、今でも自分が頭がいい方だなんて思ったことすらありません。
そんな私でも合格できたの、少しでも勇気づけになればいいなと思います。
本文
1.勉強のスタート
予備校は早く申し込みするに越したことはありません。
3月に予備校を申し込む(申し込んだだけで教科書は一切開いてません。)
本格的な勉強は8月からスタートしました。
試験は12月中ごろなので、受験まで残り4カ月半です。
私の法人では受験有給が試験前1カ月あります。
それまでは仕事しながらの勉強なので、一日勉強に避ける時間は1~2時間程度でした。
結果として最後は切羽詰まってたので、8月より前に勉強することをおすすめします。
スタートの時期はその方がどれだけ毎日の勉強に時間をさけるかによりますが、
私のようにせいぜい1~2時間程度が限度でしたら、ずばり6月から勉強することおすすめします。
2.予備校選び
予備校はTACを選択しました。
TACの教材は本試験の問題と照らしても網羅性は十分だと思いますので、今振り返ってもTACでよかったと思います。
また、当時TACにした理由としては、私は神奈川住んでいるのですが、一番近い予備校がTAC横浜校だったからです。
私自身は家で勉強できないタイプだったので、もっとも近くの予備校にする必要がありました。
当時予備校を選ぶ上では、これが大きな決め手でした。
たしかに、TACを申し込む受験生が大多数だったので、教材で他の受験生と差が生まれないように無難にTACにした面もあります。
しかし、他の予備校についても同じ試験の勉強をする以上、予備校間でテキストに大きな差はないと思います。
仮に自宅から最も近い予備校が大原やCPAだったら、そちらを申し込んでました。
正直、予備校選びは合否に大きな差は生まないと思います。
ただし、一緒に勉強をする仲間の存在はかなり大きいです。
そのため、もし、身近に勉強する仲間がいれば、その仲間と同じ予備校にすることも判断材料となります。
3.試験科目の全体像
修了考査の受験当日までのざっくりしたスケジュールを構成するためには、まずは受験科目の情報を事前に整理しましょう。
主な科目と科目ごとの問題のイメージは以下の通りです。
・会計実務(理論の筆記立+計算があるので、論文式と同じようなイメージ)
・監査実務(理論の筆記。論文式のような規定集はありません….)
・税務実務(理論の筆記+計算があるが、法人税・消費税・所得税に、事業税・相続税・贈与税・財産評価・ちなみに法人税は論文式では捨ててた方も多い”グループ法人税制”や”組織再編税制”も加わる)
・経営分析とIT実務(2時間の試験だが侮れない。経営分析は理論の筆記立+計算あり。IT監査は理論の筆記で、キーワードの穴埋めなどもケア。内容は、ズバリIT監査に関する内容です。勉強量は、経営指標<IT監査(圧倒的に))
・職業倫理(ひたすらに暗記… キーワードの穴埋めなどもケア。ただし、1時間の試験であり、出題範囲も一番少ない)
詳しい出題傾向は、過去問が協会HPなどにも掲載されているため、勉強開始時点で事前に過去2・3年程度をざっくりみてもらうとよいでしょう。
おそらく問題は難しく感じ、量も多いので気が滅入るかもしれませんが、がっつり読み込む必要はないので、大問と小問の構成や問題の出され方などをなんとなく理解しながら流し読みしていただくのが良いかと。
また、予備校のテキストにも過去問集などがある場合、そちらを確認してもらうのも有効です。
ただし、過去門を真っ向から解くのは個人的に後にも先にもおすすめしません。理由は体力の消耗が激しいという点と、出題傾向や難易度が変わる可能性もあり、かえって無駄になる可能性があるためです。直近に出た過去問がそのまますぐに出題される可能性は低いと思うので、過去問そのものは試験問題に慣れるために利用するのがベストと思います。
なお、ここで誤解を生まないために補足ですが、直近で出題された問題そのものは出にくいですが、その周辺論点が問われる可能性はむしろ高いため、その辺は逆にケアするように心がけましょう。
4.試験科目ごとの勉強量とスタート時期
科目の勉強量のウェイトでいえば、税務が全勉強時間の半分程度を占めるといっても過言ではないでしょう。
きっと予備校の税務のテキストが圧倒的に他の科目より厚いことから共感してもらえるかと…
ウェイトの私の全体感では「税務40~50%・会計20~25%・監査15~20%・経営IT実務10~15%・職業倫理おまけ」こんな感じです。
あくまで主観ではありますが、勉強が一通り実施できた方なら、上記のウェイトの認識に大きな差はないかと思います。
スタート時期については、当然ですが勉強量が多い、税務から前倒しで取り掛かることになるかと思います。
上記を見越した上で、各科目の勉強スタートは以下の感じです。
・税務:半年~5カ月前にスタート
・会計:4カ月前~3か月前にスタート
・監査:3か月前にスタート
・経営IT:IT監査について、2か月前からスタート
・職業倫理:1カ月前からスタート
僕自身はというと、1カ月程度スタートが遅かったです。そのため、最後はパンパンなスケジュールになりました。
出来れば真似していただきたくないです…
確かに合格すればいいのですが、無理のない勉強で合格するためにも、この1月分の差は非常に大きいと思います。
ちなみに、最後の1カ月は毎日10時間以上の勉強はしてましたね。
最終的に時間的な制約から、どこかの論点をあきらめるという取捨選択をするのはあまりやりたくないことです。
普段勉強で「こんなのでないだろう」と思って何気なく読んでた論点が、本番で普通に出題された記憶も少なからずあります。
取捨選択は最後の手段に取っておきましょう。
スケジュールの話にもどりますが、少なくとも税務の勉強は半年前、すなわち受験日の12月中頃から逆算すると6月中頃から開始するのが理想かなと思います。
どのみち最後の1カ月は、最後の追い込みの期間となりますが、新しい論点の勉強を行うのは精神衛生的に悪しきことで、集中力の妨げになりかねないです。
何事もそうですが、始まりが一番つらいものです。しかし、早め早めの勉強が試験の命運を分けるというのは言うまでもなく、この記事の通りに「じゃあ、半年前からでいいや」ではなく、できれば早めの勉強をお勧めします。
5.勉強戦略について
勉強の戦略は人それぞれです。とはいえ、そんなことを言っては身も蓋もないので、私の実際に心がけた月ごとの勉強方針を紹介します。
私は、以下の3点を意識しました。
・月ごとにテーマを決める
・月ごとのテーマに対して、それを日数で分割して実施
・月ごとのテーマに対する進捗を週次で管理
例えば、8月はTACの税務講義の動画をすべて見終わるようにテーマを立てました。
このテーマを達成するために、まずは税務の教科書の枚数をカウントします。
その上で、8月は31日間あるので、「テキストのページ数÷31日」で1日で進めなければいけないページ数を決めます。
後は、淡々とTACの講義動画を消化していき、毎日繰り返すだけですが、当然人間なんでさぼる日も出てきます。
そこで、週末などのその1週間で進めなければいけなかったページまで、あと自分がいくつ足りてないの進捗を把握します。
その上で、同じ週内で消化しきれるなら頑張って消化してみたり、絶対に無理であれば次の週に加算していきます。
おおむね8月~10月いっぱいは、このような感じで勉強してました。
感覚ですが、毎日の勉強時間にならせば2~3時間程度のなるかと思います。
なお、具体的な各科目ごとの勉強方法やスケジュールは別の記事で個別に紹介していきます。
6.取捨選択について
修了考査は試験範囲が広いです。
ほぼ全ての方が不完全な状態で臨むことを余儀なくされると思います。
完璧でないと何かと不安になり、試験直前になるとあれもこれもと詰込もうとし、結果、思ったように消化しきれず不安なまま試験を向かえることになるかなともいます。私もそうでした。
勉強範囲については、どうしてもあきらめる箇所はあると思うのです。
この場合、試験で出そうにないところを、自分なりに山を張って取捨選択が求められます。
取捨選択には、ある一定の基準があると、判断に迷いがなくなります。
そこで、私は取捨選択の基準として、「実務で触れる可能性が高いかどうか」という基準をもうけてました。
これは、修了考査と論文式試験との大きな特徴の違いでもあると思います。
論文式試験では実務がどうこうというよりは基本問題を的確に答える力が求められてた気がします。
予備校によっては論点をABCなどにランク分けし、「A確実に抑え、可能ならBランクも抑え、Cは最悪捨てましょう」というように指導してくれてたのではないでしょうか。
多少の応用的な論点はとばしても合否に影響はなかったのです。
しかし、修了考査では、論文式試験で飛ばしていた応用的な話も普通に出題されてきます。
短答・論文では応用論点であったものも容赦なく出題されますので、ランク分け等をするのは難しいという特性があります。
そこで、なぜこんな問題まで出題するのかと作成者の意図を考えたときに、私なりの見解として、修了考査はより実務に沿った問題が出題されているのではないかと思ったのです。
大した裏付けにはなりませんが、修了考査の試験科目の名前には『実務』というワードがついてますので、その点からも上記のように考えました。
試験直前期に私は「実務で触れる可能性が高いかどうか」という視点で、習得できなかった論点の取捨選択を行いラストスパートをかけました。
結果的に、試験直前に見直していた論点が、実際の試験問題でかなり出題されました。
そのため、今振り返るとあながち間違っていなかったかもと思います。
もちろん、ある程度は網羅的に勉強を行った上での取捨選択だから効果を発揮したのだと思います。
初めから取捨選択して、山を張りに行くの、さすがにリスキーです。
以上、長文となってしまいましたが、皆さんのお役に立つ情報となれば光栄です。
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